京都市で子育て世帯が流出するのはなぜ?住宅価格高騰と「住み続けられる観光都市」を考える
学生や若者が集まる京都市で、なぜ結婚・子育て期になると近隣都市へ出ていく人が増えるのでしょう。住宅価格、住まいの選択肢、観光都市としての成長を一緒に見ます。
- 京都市の分析では、15〜24歳は転入超過ですが、25〜39歳と0〜4歳は転出超過です。
- 京都市は、結婚・子育て世代が求める条件に合った住宅の確保の難しさが大きく影響していると分析しています。
- 市は別の制度説明でも「住宅価格の高騰など」による近隣都市への流出を課題として明記しています。
- ただし、観光やホテルだけを原因と断定することはできません。住宅市場は土地、建築費、供給、投資需要、交通など複数要因で動きます。
学生は来る。でも、子育て期になると出ていく
京都は大学の街です。京都市の人口動態分析でも、15〜24歳は転入超過です。一方、25〜39歳は転出超過となり、その子ども世代に当たる0〜4歳も転出超過です。
25〜39歳の主な転出先として、市は京都府南部、大阪府、滋賀県、東京都を含む関東を挙げています。特に近隣都市への家族単位の転出について、住宅事情、通勤、結婚など複数の要因を挙げながら、「求める条件に合った住宅の確保の難しさ」が大きく影響していると分析しています。
京都市自身が「住宅価格の高騰」を課題に挙げている
より踏み込んだ表現は、京都市の「非居住住宅利活用促進税」のFAQにあります。そこでは、住宅価格の高騰などによって、結婚・子育て期の25〜39歳と0〜4歳が近隣都市へ多数流出していることを、市が抱える課題として説明しています。
空き家、別荘、セカンドハウスなど、居住に使われていない住宅の流通・利活用を促し、住宅供給や子育て世代の居住につなげるという考え方です。
ニュースにも表れる「京都で家を持ちにくい」という感覚
行政資料だけでなく、報道でも同じ問題が繰り返し取り上げられています。
関西テレビは2023年、京都市内で住宅を探した子育て世帯が、市外での住宅購入を選んだ事例を報道しました。取材を受けた男性は京都市内の住宅について「京都市内は5000万円超える」と語っています。これは一家庭の事例であり、市全体を代表する統計ではありませんが、住宅価格が実際の居住地選択に影響する場面を示しています。
関西テレビ「京都市“高さ規制”緩和 不動産高騰で人口流出・税収減少のピンチ」 ↗
さらに2026年の関西テレビの特集では、京都と滋賀の出生率の違いを取り上げ、滋賀側で通勤しやすい駅近住宅、比較的抑えられた住宅価格、雇用が子育て世帯の居住選択に関わるという専門家の分析を紹介しています。
関西テレビ「隣り合う京都と滋賀で出生率が『真逆』になったワケ」 ↗
では「観光客やホテルのせい」なのか
ここは単純化できません。京都市の公式分析も、子育て世帯の転出を観光やホテルだけで説明していません。住宅事情、通勤、結婚など複数の要因を挙げています。
京都では景観を守るための高さ・デザイン規制があり、土地の供給には地理的な制約もあります。建築費、金利、投資需要、住宅の広さや種類、交通利便性なども住宅価格や住み替えに影響します。観光需要や宿泊施設の増加も地域によっては土地・建物の使われ方を考える一要素になり得ますが、市全体の子育て世帯流出を「観光が原因」と一本化する根拠はありません。
景観規制そのものについては、別記事で制度の背景を整理しています。
民泊・簡易宿所の問題とも、少しだけつながっている
住宅だった建物が宿泊施設として使われるケースでは、地域の中で「住む場所」と「旅行者を受け入れる場所」のバランスが論点になります。ただし、これも住宅価格高騰や人口流出のすべてを説明するものではありません。
京都市が2026年に進めている民泊・簡易宿所の規制見直しでは、主に騒音、ごみ、近隣トラブル、地域コミュニティとの共生などが論点になっています。住宅政策と宿泊政策は別制度ですが、どちらにも共通するのは、観光都市の中で住民が暮らし続けられる環境をどう守るかという問いです。
京都市も「住み続けてもらう」政策を強めている
京都市は2026年度も、市営住宅の空き住戸を民間事業者のノウハウで改修し、若者・子育て世帯向けに供給する「若者・子育て応援住宅」を進めています。市は事業説明の中で、結婚・子育て期の近隣都市への転出を明確な課題として挙げています。
また「京都安心すまい応援金」は2026年度・2027年度へ延長され、未就学児のいる世帯による既存住宅購入とリフォームに、基本100万円、加算を含め最大200万円を交付します。2026年9月13日時点で、2026年度の事前申出受付は175件と公表されています。
住民が減れば「暮らしの京都」も変わる
京都の魅力は、寺社や町家だけでできているわけではありません。町内会、商店、学校、地域の祭り、地蔵盆のような子どもを中心とした行事も、そこで暮らす人がいるから続きます。
子育て世帯が減れば、人口の数字だけでなく、地域行事の担い手や子どもの参加者にも長期的な影響が出ます。観光客が見たい「京都らしい暮らし」は、実は住民の日常によって支えられています。
「観光で成功する街」と「住み続けられる街」を両立できるか
観光客が来ることは京都の経済に大きな意味があります。一方で、市民が住宅を確保できず、子育て期に近隣都市へ移る状況が続けば、観光都市を支える地域社会そのものが細くなる可能性があります。
宿泊税、観光財政、景観規制、民泊規制、住宅政策。別々の制度に見えますが、HOTEL ECCLESIA GUIDEではこれらを「京都を観光地である前に、暮らし続けられる街として残せるか」という一つの問いから見ていきます。
HOTEL ECCLESIAが地域一体型の宿泊業を考える理由
宿泊事業者が京都の住宅問題を解決できるわけではありません。それでも、京都で宿泊業をする以上、地域社会と無関係ではいられません。
地域行事に関わること、福祉や子ども支援とつながること、地元の事業者へ仕事を発注すること、近隣と日常的な関係を持つこと。HOTEL ECCLESIAが目指すのは、単に「京都にあるホテル」ではなく、京都の地域社会の一員として宿泊業をするホテルです。
観光による利益と、そこで暮らす人たちの生活。その両方を見ることが、観光都市で宿を運営する責任の一つだと考えています。
出典・確認情報
住宅価格や人口移動には複数の要因があります。本記事は、観光・宿泊施設を単独原因とせず、京都市の一次資料と報道を区別して紹介しています。個別の報道事例は市全体を代表する統計として扱いません。